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2006年10月25日 (水)

親の権利とは2

前の記事にいただいたコメントを見て考えた事を追加します。

親の親権を一時停止し、医師が一時的ながら親権者になったことについて。
変な話ですが、新生児科医は親権者になる機会があります。赤ちゃんが捨てられるのはそんなに珍しい事ではありません。こっそりと病院の前に捨てられる事もあれば、出産前からいらないと母親が宣言し、お産が終わるとそのまま病院に捨てられる事もあります。わたし自身、そうやって捨てられた赤ちゃんの親になった事があります。28週の極低出生体重児を里親に引き渡すまで3ヶ月以上親代わりをしたこともあります。さあ輸血をしようかと思ってもすべて主治医の権限で決定し、責任をとらなければいけません。医師が親権者となることについて、新生児科医は慣れていてそれほど異常な状態とは感じないのかもしれません。

今回の件を考えるのに、日本未熟児新生児学会が出したガイドラインが参考になると思います。
「重篤な疾患を持つ新生児の家族と医療スタッフの話し合いのガイドライン」
1.すべての新生児には、適切な医療と保護を受ける権利がある。
2.父母はこどもの養育に責任を負うものとして、こどもの治療方針を決定する権利と義務を有する。
3.治療方針の決定は「こどもの最善の利益」に基づくものでなければならない。
4.治療方針の決定過程においては、父母と医療スタッフとが十分な話し合いをもたなければならない。
以下つづく

1にある適切な医療と保護を受ける権利そして3の「こどもの最善の利益」が大切です。3の注釈には家族や医療スタッフの利益ではなく、こどもの利益を最優先させることを家族と医療スタッフが確認すると書かれています。

今回の件は1および3と2が相反していると判断されたことになります。この判断がきわめて難しいものである事、医療者が勝手に判断してよいものではない事は当然です。現在の制度では医療者がまず判断し、児童相談所・裁判所が結論を下すことになります。わたしの意見としては、父母の決定が明らかに赤ちゃんの適切な医療を受ける権利に反していると判断した場合には今回のような親権剥奪が行われるのは正しいと考えます。この記事にある赤ちゃんの判断がどうだったかについては、病名すらわからず言及する事はできませんが・・・。

このような問題は医療者だけで議論すればいい事ではありません。現行の制度が万全とも考えられません。個々のケースで裁判所が判断すると言っても裁判官には荷が重すぎる気がします。今回の件をきっかけにさらなる議論が行われればいいですね。

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コメント

私も一時期新生児専門を考え、未熟児新生児学会のセミナー(信州)にまで出掛けた事があります。ただ私の中でこの線は越えては行けないと勝手に判断していたからかもしれませんが、親権代行は無理だと考えていました。そうなりそうな一歩手前でなんとかなっていたこともあるかもしれません。

これまでもそうですが、これからの医療は特に生きるということについて哲学的にならないといけない時代になったのでしょう。それぞれの立場で違うということも含めて考えなくてはならないですね。常識というものがどこにあるのか・・・それが一番の問題になりそうです。

それと私が言うのもおこがましいのですが、先生の文章は素敵ですよ。

投稿: クーデルムーデル | 2006年10月26日 (木) 00時23分

今回の件について関心を寄せている風というものです。

 NICUでは、親権代行があるとのことですが、その場合の治療費はどなたが負担するのでしょうか?
 今回は、親権が回復した生みの親が払うことになるのだろうと、想像しているのですが、捨てられた子の場合は、里親さんが支払うのでしょうか?それともなんらかの補助金?などでしょうか?

 もし、親権停止された親に支払いの責任(or義務?)が生じないのであれば、親権の乱用が増えるような気がします。そのようなことはないと思うのですが・・・。

投稿: 風 | 2006年10月28日 (土) 00時37分

>クーデルムーデルさん
医療者がただの技術者であってはならないのはもちろんのことと思います。最新の医学技術はほんの少し前までは神の領域であったところまで入ってきていますから、医療の中の人間だけで決めることはもう難しいですね。

>風さん、はじめまして。
法的な事には疎いので誤った認識があるかもしれません。捨てられた赤ちゃんは児童相談所(つまり国)が預かることになりますが、児相が治療方針を決定するわけではないので実質主治医がすべてを決めることになります。預かり中も里子になってからも医療費は公が負担することになり、親にも里親にも負担は発生しないはずです。里子は養子として戸籍に入るまでは里親には負担はなく、手当が支給されます。もともと乳幼児には医療費は発生しませんから、ご心配のようなことにはならないと思いますよ。生活保護であれば子どもを手放すと支給が減りますから、ほとんどネグレクトしている親でも手放しくれないことがあります。

投稿: 管理人 | 2006年10月28日 (土) 09時15分

ご回答いただきまして、ありがとうございます。

 今回のような件の場合、医療費は国が負担するのですね。よく分かりました。

 あと、

>もともと乳幼児には医療費は発生しませんから、

 すみません。どのような場合に発生しないのでしょうか?乳幼児は、風邪でも何でも医療費は発生しないのですか?捨て子の里親は払わなくてよいということでしょうか?読解力がなくて分かりませんでした。

 いずれにせよ、今回の判例は、医療費を払いたくないというケチな保護者にとっては、朗報になるかもしれませんね。給食費を払わない保護者もいるくらいですから(これも、結局は学校の先生が自腹で立て替えていますから)。

 親権の乱用や、親権停止の乱用など、またそのうちに、大きな議論が展開される扉が開かれた気がします。

投稿: 風 | 2006年10月29日 (日) 21時51分

>風さん
医療費が発生しません→医療費自己負担が発生しません
ですね、訂正します。
自治体により差がありますが、少なくとも2歳までは医療費自己負担はありません。

今回の件と医療費を払いたくない保護者とはまったく関係ありませんよ。

投稿: 管理人 | 2006年10月30日 (月) 19時23分

管理人様

 ありがとうございました。

>今回の件と医療費を払いたくない保護者とはまったく関係>ありませんよ。

 本当にそうですね。ちょっと考えれば分かることでした。もっと熟慮&勉強してから発言すべきだったと思います。

 大変失礼いたしました。今後ともよろしくお願いいたします。

投稿: 風 | 2006年10月31日 (火) 00時02分

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