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2007年1月30日 (火)

姫路での悪性リンパ腫患児死亡の民事裁判について

先週26日に神戸地裁であった判決が報道されました。亡くなった男児のご家族には心からお悔やみ申し上げます。

自分と同じ病気で亡くなる子がいまだに存在する事が悔しいですが、悪性リンパ腫には予後のよいもの悪いものがありこれも現実です。抗がん剤治療は常に死と隣り合わせである事は、今でも何ら変わりありません。

姫路赤十字病院において1999年から8歳の男児が悪性リンパ腫の診断で治療を開始、いったん退院し2000年に維持療法で化学療法を行った際に合併症の間質性肺炎で死亡されました。判決は報道によると死亡と治療の因果関係は認めず、姫路赤十字病院が小児白血病研究会と言う白血病や悪性リンパ腫についての研究会が作成したプロトコール(抗がん剤の種類、使い方の計画)を使用したのにかかわらず研究会に所属していないことを説明していなかったことなどに対して1000万円の賠償を命じたようです。

小児白血病研究会のHPには以下のような記載があります。
『小児白血病研究会は北海道・東北・東海・関西・京都・中四国九州の各地区の血液疾患の専門病院が白血病の簡便な治癒と安全性の向上を目的として共同で治療を行うために集まった会です。』

医師以外の方には研究会が何なのかわかりにくいかと思います。日本には○○研究会というのはたくさんありますが、任意の医師の集まりでしかありません。臨床試験レベルであるプロトコールを十分な説明なしに使用した事には倫理的な問題があるとわたしも考えます。しかし、研究会に所属しているかどうかを説明しなかった事が説明義務違反と認定された事には驚かされました。

以下は今回の裁判とは内容が少しずれますが、ご容赦を。

わたしは新生児を専門としていますが、小児科医として働いていたのは1998年までです。この件のわずか1年前ですが、この当時は血液専門医の所属しない病院での治療は当たり前に行われていました。しかし、わたしが小児科を離れた直後から、わたしたちの大学では地方病院での白血病治療をしなくなりました。専門医志向が高まっている時代の趨勢から、当たり前のことと受け止めていました。1999年は全国的に見てもその端境期にあったんだろうと思います。現在の状況で専門以外の重症疾患治療に当たる事を望むDrはあまりいないでしょう。自分が悪性リンパ腫で治療した際に主治医だったDrはそもそもが卒業してまもない研修医で、専門を持っていませんでした。その後、循環器を専門とされました。院内ではないものの専門医の指示を受けての治療でしたが、きっと大変だったでしょうね。

さて、専門医が行わなければいけない治療はどこからか?医師側と患者側の認識は大きく隔たりがありそうです。だれかが線引きをしてくれれば簡単ですが。小児科専門医であればそのサブスペシャリティーを問わず診療可能とわたしたちが考えても、患者側は各疾患の専門医の治療を望む事になるでしょうね。本音を言えば、専門性の高い疾患はすべて専門医に!と思わないわけではありませんが(わたしたちもその方がどれだけ楽なことか)、そもそも分野によっては専門医が不足しています。また、前のエントリーでも書きましたが、各分野の専門医を複数所属させる事ができるのは北海道では医大のある町だけでしょう。

わたしがサブスペシャリティーとする新生児分野でも、新生児専門医がいない事を説明せずに治療したなどと裁判が起こるんでしょうか?今の新生児専門医(まだ正式な学会の専門医は誕生していません)の数ではとてもNICUを支えることはできません・・・。専門医がいない事を説明して同意を得る事は可能なのでしょうか。今回の件に限らず現場の実情を無視した民事裁判の判決には多くの医師が戸惑っています。

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コメント

田舎だとよくあるのですが、
「他に行くのが嫌だから先生のところで何とかして」
と言ってくる人が少なからずいます。そのお願いに義侠心を出してOKしてしまって、もしも何か問題があったら、果たしてこの患者さんは何も文句は言わないのでしょうか。その人が言わなくてもその周りの人間が文句を言ってくることがありますし。

そういう考え方からすると、残念ながら
「きちんと専門医のところで診てもらってください」
と言わざるを得ません。


医師なら皆さんお分かりだろ思いますが、自分の非専門分野の診療をさせられるのは非常に嫌なのです。断れるものなら断りたいのですが、病院や上司は診療を強要してくるのです。そんな中でこんな判断が下されるのは本当に嫌ですね。(今回の判例は明らかにDQN判例ですが)

投稿: 暇人28号 | 2007年1月30日 (火) 22時14分

医療の進歩は激しいものがありますね。日常の診療の中で専門の新生児分野、小児科一般の勉強で大変です。大きな病院ではもうほとんど内科医は存在せず、消化器、呼吸器、循環器、血液など専門化されています。小児科医も同じ傾向にあります。専門分野以外の診療が免除されるなら、こんな楽なことはないですが。

姫路赤十字病院の内情はわかりませんが、どうして専門分野でない診療に踏み込んだんでしょうか。ご遺族が亡くなったお子さんに100%の事をしてあげられなかったと後悔の念から逃れられなくなったのに、やはり主治医の責任はあるのかなと思います。しかしながら、説明義務違反とした裁判の結果はやはり疑問ですね。

投稿: 管理人 | 2007年1月31日 (水) 03時06分

姫路赤十字病院小児リンパ腫男児死亡訴訟
仲正昌樹......金沢大学法学部教授
篠原聖二.........医療過誤原告の会 関西支部長
【佐藤功行.........佐藤功行法律事務所】
原純一........大阪市立総合医療センター小児血液腫瘍科
宮脇正和.........医療過誤原告の会 会長

この佐藤さんていったい...と思ってググってみた。
筆を持つことが得意な弁護士さんのようです。
http://www5f.biglobe.ne.jp/~constanze/nomarin444.html

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投稿: 【担当弁護士さん佐藤さん】 | 2009年5月17日 (日) 18時34分

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