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2007年9月11日 (火)

交通事故と医療事故

昨日、札幌での死亡交通事故が報道されているのを見ました。

信号のない交差点で自動車と二人乗りの自転車が出合い頭に衝突し、運転していた女性が自動車運転過失致死傷で逮捕。しかし、自転車側に一時停止違反があったとの報道です。亡くなった高校生にはお悔やみ申し上げますが、これで運転者が逮捕というのもかわいそう・・・と思いますね。自動車側に速度超過があったのかは報道されていませんでした。

テレビで警察官が「見通しの悪い交差点では一時停止の義務はなくとも、徐行し安全確認を行うと道路交通法で定められている。」といった発言をしていました。いきなり飛び出してきた自転車を避けられなかったのは違反と言うことですね。これはきびしい。

ちょうど同じ日に、道内の1~8月の歩行者、自転車の死亡事故の半数以上で被害者側にも違反があったと報道されていたばかりです。この記事でも、歩行者側に違反があっても事故の主原因はドライバーにあり大半が処分されたとあります。

逮捕されたドライバーに同情してしまうのは、医療事故で時に民事、時に刑事で責任を取らされる医師の立場と似ていると感じるからでしょう。今回のような交通事故を防ぐためにはほとんどの交差点を徐行して通過するしかありませんが、現実的でしょうか?スピード違反をしていたのなら悪いでしょうが、乱暴な言い方をすれば運が悪かったと思ってしまいます。

医療事故の中には、居眠り運転に近いようなひどいミスというケースもあるでしょう。左右間違えて手術してしまったとか・・・。しかし、多くの医療過誤裁判の報道を見て感じるのは、これは避けられないだろうという同情です。見通しの悪い交差点では自転車が飛び出してくる可能性は予見でき、徐行していれば避けることができたというのと同様のケースが医療裁判に多いように思います。リスクの高い産科なんかは、雨の夜、道路に酔っ払って寝ている人がいたり、黒っぽい目立たない服を着た高齢者が横断歩道のない道路を横切っていたり、そんな危険な運転をずっと強いられているようなものです。

医療裁判では医師の鑑定書が判決に大きな影響を与えます。「見通しの悪い交差点は徐行し安全確認し通過する義務があった。」の発言と同じような鑑定書が提出された場合、医師側の敗訴となる可能性が高くなります。しかし、人手不足の産科医は徐行してゆっくり通過するような余裕なんてないんですけど・・・。

医師は傲慢で反省することがないと思っている人が多いかもしれませんが、それは間違いです。症例検討会議なんかでは、ずけずけと非難されることは日常茶飯事です。患者さんが亡くなって病理解剖になった場合、CPC(臨床病理検討会)と呼ばれる病理医と臨床医との間の検討会が開かれます。このディスカッションで、治療はパーフェクト!反省点はありませんなどと言う結論になることはあり得ません。あの時、こうすれば、この検査をしておけば、こんな議論がどんどん出てきます。しかし、反省点をたくさん指摘されたとしても主治医は非難されているのではありません。限られた時間、限られた情報の中で主治医は全力を尽くした訳ですから、非難される理由はありません。医療裁判で、このCPCの議論と同じレベルで鑑定書を書くえらい先生が多いように思います。主治医を非難するつもりはないのかもしれませんが、裁判長はそのようには受け取らないでしょう。

飛び出してきた自転車をはねてしまったドライバーに同情が集まるのは、ほとんどの人がその状況を理解できるからです。医師が医療訴訟で裁かれている医師に同情するのもまったく同じ理由です。残念ながら一般の人にも司法関係者にもこの状況をなかなか理解してもらえません。

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コメント

医師を目指し始めてから、ニュースで流れてくる医療関係のニュースには、敏感になってきました。それと、先生のブログは本当に勉強になります。医学部にすら入っていない、医師を目指している私は、このような情報を得ている状況で思うことは、「大変」「医師は何のためにいるのか」ということを毎回考えさせられます。正直、マイナス思考になってしまします。それでも、毎日、受験勉強をしてしまいます。私は子持ちで社会人経験者ですが、生粋の高卒生は、このようなニュースや医師の現状、本音を知ってどう思うでしょうか。未来に希望を持っているんでしょうか。政治家は医師のこと分かりませんよ。どうしたいいんでしょうね。
医師で弁護士で、政治家っていう人が増えれば、先生方の不安を取り除くことができるんでしょうか。今から医師を目指す方の支えになるのでしょうか。どうしたらいいんでしょうね。そんなことを考えながらも、私は医師になりたいと思ってしまう。そんな私こそ、おかしいですね。

投稿: ゆいママ | 2007年9月12日 (水) 22時03分

>ゆいママさん
ごめんなさい、マイナス思考すぎですね。実は書いてて最近こんな後ろ向きのばっかりだなと思ってました。
でも、わたしがこの仕事を続けているのは、“仕方ないから”ではなく“楽しいから”ですよ。

投稿: 管理人 | 2007年9月13日 (木) 01時42分

それを聞いて安心しました。しかし、現状、怒れてくるのも分かります。私も、もし医師になれたら、もっと分かることなんでしょうね。このブログを読むたびに、自分も考え、面接対策してます。

投稿: ゆいママ | 2007年9月13日 (木) 18時16分

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