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2007年11月 9日 (金)

混合診療の是非

11月6日、東京地方裁判所で「混合診療を認めないのは違法」という判決が出されました。いろいろな報道がされています。

混合診療について少し説明しておきます。病院に行って保険証を出して受ける保険診療の範囲はきっちり決められています。この薬を処方するのはこの病気の時だとか、この検査は月に何回までできるとか、細かな決まりが存在します。新薬が発売された時に、効果があるとわかっていても○○病に対する保険適応がなければ保険診療では使用することができません。もし保険適応のない薬を使いたければ、この薬以外の検査やら再診料やらすべての医療費を含めて自由診療(10割負担)としなければいけないのです。新しい治療法が開発されても多くの場合、すぐには保険が適用されません。混合診療を認めた場合、保険適応のないこの薬代だけ自費で支払えば、他の医療費は3割負担で済むことになります。いい事ばかりのように思えるかもしれませんが、そう単純ではありません。

原告のがん患者さんの主張は尤もと思います。しかしながら、この判決を悪用しようとしている悪い心を持った人たちがたくさんいるかもしれないことに原告の患者さんは気づいているのでしょうか?

地元北海道新聞は、弁護士なしで裁判を闘った原告のコメントが載っているだけで混合診療の是非についての識者の意見はありませんでした。混合診療について考えたこともない多くの読者は「美談」と単純に受け取ったかもしれません。

読売新聞には混合診療が解禁された場合の問題点を指摘するコメントが掲載され、混合診療には反対なのかな?と思わせるような内容でした。

逆に、日本経済新聞では11月9日の社説「混合診療で患者の選択広げよ」と諸手を挙げて混合診療賛成を主張しています。その中で「混合診療には公的医療費の膨張を抑える効果も期待できる。」と本音もしっかり書いてしまっています。政府や経済界の本音はこうなんだろうと多くの医師は疑っているわけですが・・・、こんなにはっきり言っちゃっていいのかと思うほどです。さらに11月8日には八代尚宏ICU教授、前にも書いたことがありますが政府の経済財政諮問会議のメンバー、の「公的な保険診療は財政的制約もあって急拡大できないが、個人負担で受ける自由診療が増えれば技術の進歩につながる」とのコメントを掲載しています。以前から公的医療費削減を目的に混合診療解禁を目指している人物です。

わたしたち混合診療に反対するものが恐れているのは、日本経済新聞や八代尚宏氏の主張通りになった場合にどうなってしまうかです。例えば生体肝移植のような多額の医療費がかかる先進的な治療法が開発された場合、今の制度であれば時間はかかっても保険が適用されます。しかし、混合診療が解禁された場合、いつまで経っても保険は適用されない可能性が高いと思われます。そうなると金持ちだけがよい治療を受けられると言う事です。

医療費を増やしてはいけないとの前提で混合診療を認めることは間違っていると思いませんか?当然、裁判を起こしたがん患者さんもそんな事は望んでいないはずです。

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コメント

小児がんを経験した小児科医という立場から、一見見栄えのいい混合診療の問題に対して、反対の立場のコメントをなさっているのを拝見し、感銘いたしました。
私は小児がん臨床に直接関わる小児科医ですが、混合診療をむしろ治療に都合がいいとして歓迎するであろう医師も少なくないと思われる中、日本の将来的な小児がん治療のあり方を心配してのご意見と感じ入りました。
特に、患者さんもみるであろうブログの中で正直に主張していらっしゃるのをみて、私もあきらめずに小児がん治療に対して尽力したいと思えました。
先生は現在は小児がん治療はなさっていないとの事ですが、是非また小児がん臨床に関わっていただきたく存じます。

投稿: がんの医師 | 2007年12月14日 (金) 23時51分

>がんの医師さま

はじめまして、コメントありがとうございます。

日本医師会(わたしは会員ではありません)は一貫して混合診療反対の立場をとっていますが、日本医師会のイメージは完全に悪役・・・医師会が混合診療に反対するのは私利私欲のため・・・と考える一般の人は多いように思われます。本当に悲しくなるほど保険医療を理解している人は少ないですね。

小児がん患者はわたしも含めて小児慢性疾患と認定され、医療費の負担を免除されてきました。わたしたち小児がん患者は多くの恩恵を受けています。それだけに医療の経済についてもしっかり考える義務があると考えています。

投稿: 管理人 | 2007年12月16日 (日) 14時26分

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