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2008年10月28日 (火)

集団無責任

首都東京で表面化した周産期医療の問題が連日取り上げられています。
われわれ周産期医療にかかわるものにとって首都圏の周産期医療がぎりぎりの状態であることはすでに知れ渡った事実ですから、特に驚くようなことは何もありません。

総合周産期母子医療センターの認定がどんなものなのかもよく知っています。本来の規定をすべて満たしているところなんていくらもないはず。
自治体は無理にでも(規定を満たしていなくても)認定してしまえば責任を果たしたことになります。病院は規定を満たそうにもそんな人的余裕はない。国立の病院(公立も?)は総合周産期に認定されても補助金はありませんし、メリットがない。

この件について書く気はなかったのですが、今朝、読売新聞を見ていて、断った8病院に対しての『集団無責任』との言葉を見つけてやはり反論は必要だろうと考えました。

地方の基幹病院ではそこが受け入れるしかない。多くの病院がある大都市圏では軽い気持ちで受け入れを拒否できるとの意見が、いろんなところから聞かれます。医療関係者にもそういう主旨の発言をしている方が多いようです。

現在の医療は常にベストの結果を求められていると、わたしたちは自覚しています。昔はその地方の病院にとって、自分にとってのベストを尽くせばよいと考えていましたが、今はそうではありません。首都圏の周産期施設はどこも人手不足でぎりぎりです。仮に他科にも関係するような重症妊婦の受け入れ依頼があった場合、ぎりぎりの状態の自分の施設よりも余裕のあるとこが他にあるかもしれないと考えます。その方がベターだからです。地方の基幹病院では時間をかけて他に搬送する方がベターという状況は少ないでしょうから受け入れることにならざるをえません。
当直の医師だけで対応できず、別の医師を呼び出している間に患者さんが急変すれば責任を問われるかもしれません。NICUがいっぱいで受け入れて、生まれた赤ちゃんの状態が悪かったら・・・赤ちゃんを別の病院に搬送する事でさらに状態が悪くなるかもしれません。ベストを尽くしましたとわれわれが主張したらすべて納得してもらえるのなら安心して治療に専念することができるんですが・・・。現実はどうなっていますか?

ぎりぎりの状況で必死にがんばっている現場の人間を『集団無責任』と切り捨てるとは何とも悲しいことです。きっと正義感にあふれた記者なんでしょうが、その正義感が必死でやっている現場の人間の心を壊しているのを認識すべきです。

もう少し付け加えます。
周産期医療の現場を支えているのは産科医だけではありません。われわれ新生児科医を忘れていませんかね。新聞記者も政治家も新生児科医の存在すら知らない人もいるようです。妊婦受け入れ不能の大きな一因はNICUベッドが満床であることです。NICUを支える新生児科医は非常に不足しています。少し前までは新生児を専門にする小児科医だけでなく多くの小児科医が周産期医療にかかわっていました。しかし、未熟児の脳性麻痺ですら訴訟になるような現在の状況のせいで多くの小児科医は周産期医療にかかわろうとしなくなりました。これまでだれでも診ていたような軽症患者までNICUに入院となるせいで満床が多くなっています。

現在の産科医数、新生児科医数で全国のすべての地方で24時間365日ベストの医療を行うのは不可能であることを知ってください。首都圏も例外ではありません。われわれはできる範囲でのベストを目指します。

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2008年10月22日 (水)

小児科医の過労死、損害賠償訴訟控訴審は棄却

立正佼成会付属佼成病院の小児科医中原利郎さんが1999年に過労からうつ病を発症し自殺した事件です。

すでに行政訴訟では過労死と認定され結審しています。これで自殺が労災と認められました。

今回行われたのは病院に対して損害賠償を求めた民事訴訟の控訴審です。過重労働からうつ病を発症し自殺したことは認められながら、病院には責任がないとして原告側遺族の主張は認められませんでした。

詳細は以下のHP「小児科医師、中原利郎先生の過労死認定を支援する会」にあります。中原先生の遺書にもぜひとも目を通していただきたいと思います。

中原先生が勤務していた小児科は6人が常勤として働いていましたが、3人が退職(のちに1人補充)し小児科のトップとなった中原先生に大変な肉体的、精神的な負担がかかったそうです。99年の3月は当直が月に8回、休日が2日のみ。まもなくうつ病を発症し、8月に病院の屋上から飛び降り自殺してしまいました。

労災認定を求める行政訴訟の中で国は、月に8回の当直といっても実際に業務についている時間は短く過重労働ではないとの主張をしていました。月8回当直、休日2日というのは先月の自分の勤務とまったく一緒です。他人事ではありません。もし仮に一晩に1回か2回しか仕事がなかったとしても、夜中の2時、4時に起こされたとしたら徹夜したのとほとんど差はありません。しかも朝からはそのまま通常勤務となります。中原先生が自殺したのは44歳の時、自分は今41歳です。体力的に非常にきつかっただろう事はよく理解できます。それに加えて、精神的な負担が大きかった事もよくわかります。NICUは比較的採算を取りやすい部門ですが、一般小児科だけの場合には小児科の稼ぎは非常に悪くなります。

行政訴訟でも、今回の判決でも過重労働が自殺の原因であることは認められました。しかし、病院には一切責任がないとする今回の判決は非常に残念です。一人の医師に月8回当直させ、休日が2日のみという過重労働を強いた病院に責任がないはずがありません。中原先生は管理職であり自分に8回の当直をつけたのは中原先生自身だったでしょう。でも、他にどんな選択があったのか?今はそういう病院から粛々と医師が去っていく時代になりました。しかし、中原先生が亡くなった当時はまだそんな考えは思いもつかない、医師であればしてはいけないと考えていた時代でした。

医師が聖職であるとみなが考え、医師自身も自覚していた時代。医師としての責任感で過酷な地方勤務も過労死基準を超える時間外労働もこなしていました。近年の患者側の医師に対する見方の変化、国やマスコミによる医局弱体化、臨床研修制度スタートによって自由を手にした若い医師を間近に見たこと、いろんな要因が長年に渡って医師を縛っていた呪縛を解いてしまったように思えます。

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2008年10月18日 (土)

血液外来

北海道はもう冬のはじまりです。雪むしが飛ぶ季節も過ぎつつあります。

週一回担当しているNICU退院後の外来では、RSVというウイルスによる一種のかぜを予防するためのくすりの注射がはじまりました。新生児外来と一緒の時間に血液外来もやっています。普段は自分の診察室にこもって処置室に行くことはほとんどないのですが、冬は注射のために処置室に頻繁に出入りします。

そこでは血液外来の子どもたちの検査、治療が行われていて、その姿が目に入ってきます。それが何ともつらいんですよね。抗がん剤をうつ子はくすりが体に入ってくる前からもう顔が真っ青、げーげーやっている子もいます。自分も毎週木曜日は外来に通って抗がん剤をうつ生活を2年間くり返しました。当時はよい吐き気止めはなかったし、すごく吐き気の副作用が強い方だったので本当につらい思い出です。2年の間にだんだん吐き気が強くなっていきました。おそらくかなり精神的な影響があったんでしょうね。

抗がん剤を注射した木曜日の夜は『ザベストテン』を見ながら吐き気を必死に紛らわせ、金曜日も吐き気で起き上がれない。終わりの頃には土曜日にまで吐き気が続きました。PTSDなんでしょう、つらそうな子どもたちを見ていて自分が苦しくなっていられなくなってしまいます。

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2008年10月11日 (土)

裁量労働従事者

たくさん回ってくる書類の中に「裁量労働従事者自己診断カード」なるものが・・・
6か月に1回、健康状態、勤務状況を自己診断カードに記載して提出しろと書いてあります。でも、去年はこんな通知来た覚えないけどなあ。今年から始まったのか?

裁量労働者とはまた都合のいい言い方があるもんですね。24時間365日、NICUを維持するのにどんな裁量があるって言うんでしょう。近頃、マックやら、いろんな裁判の報道がありましたね。経営者にとってはいい制度だこと。どんなに働いても個人の裁量ってことですから。

最近6か月の勤務表を眺めてみるとずいぶん働いてるなあと思います。試しに先月9月の勤務時間をざっと計算してみると340時間くらいになります。週80時間を超えて病院にいたことになります。ここの勤務体制は当直ではなく夜勤となっているんですが、休憩時間をどの程度と判断するかは難しいところですね。寝られる日もありますから。でも、340時間病院にいたってのは何とも長い・・・。24時間×30日は720時間。ほぼ半分は病院にいたことになります。

これで去年の春までいた地方のNICU時代より楽になったなあと感じるのは、あまりに感覚が麻痺していますね。楽になったと感じる要因は当直の日以外ほとんど呼び出しを気にする必要がないこと。事実上、いわゆるオンコールがないことですね。これは医師以外にはなかなか理解できないことかもしれません。

こんな異常な状態で辛うじて維持されている多くのNICUが今後どうなっていくのか?西の方では世界最大と言われたNICUが機能を停止したなんて噂を聞きますし、首都圏でもフル稼働できないNICUが出ているそうです。札幌市では周産期救急のコーディネーターを夜間急病センターに置いたことで、市長は『たらい回し』が改善されるなんてコメントを出しましたが理解不足にはあきれるばかりです。

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2008年10月 6日 (月)

ドラマ『小児救命』

『小児救命』というドラマが始まるそうです。

これまで小児科医を主人公にしたドラマはほとんどありませんでしたね。ドラマとして成り立つのはトップが外科医、次は救急医というところでしょうか。
で、今回のタイトルが「小児救命」、小児科医の普通の日常を描いたものではないようです。
(小児救命じゃなく)小児救急の実態は何度も書いているようにただの夜間外来です。ほとんどが風邪の患者ですからドラマにはなりませんよね。

まだ見てないわけですから、何とも言えないのですが・・・
ずいぶん前にあった小児科医が主人公のドラマではクライマックスで手術してましたね・・・小児科医なのに。
小児科と言うとわかりにくいのかもしれませんが、わたしたちは基本的に小児内科医です。内科医のこども版です。内科医は手術しないでしょ。ただ、小児科医の中にもそれではいけない、もっと何でも・・・と言う方もいるわけですが。

今回のドラマの主人公は30歳で小児病院を開業するのだとか・・・
医学部は6年、初期研修が2年、小児科医として後期研修が3年、すべてストレートに通過した場合で小児科専門医取得は29歳となります。いくらドラマといっても設定がリアルとかけ離れすぎてませんか?
開業するには後期研修は不要で、26歳から可能なのは確かなんですけどね。

24時間365日こどもを受け入れる小児病院を目指す主人公がどう描かれるのか興味はあるものの、不安だなあ何だか・・・
思えば自分も研修医の頃そんな夢を描いたことがあったような・・・

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